
この記事の目次
きじ馬(きじ車)は、九州各地で作られてきた、雉(きじ)をかたどった木製の郷土玩具です。胴体に車輪を付けた形を基本とし、人吉・球磨など地域によって大きさ、車輪の数、彩色、模様が異なります。名前や由来には複数の伝承があり、ひとつの物語だけで説明できる玩具ではありません。

きじ馬はどんな玩具?
文化庁の国指定文化財等データベースでは、きじ馬・きじ車は、子どもが紐をつけて曳いたり、上に乗ったりして遊ぶ玩具と説明されています。細長い胴体に2つまたは4つの車輪を付け、赤や緑を基調とする鮮やかな彩色を施す形が基本です。ただし、現代に残る品には飾り物として作られる小型のものもあります。
「きじ馬」「きじ車」という呼び名は地域で異なります。九州地方では木を削り出して作る技術が受け継がれ、2025年に「九州地方のきじ馬・きじ車製作技術」が国の選択無形民俗文化財となりました。文化庁は、地域ごとに形状・大きさ・車輪の数・色彩・模様が異なることを記録しています。
見比べると面白いところ
- 車輪の数と胴体の長さ
- 木肌を見せるか、色鮮やかに塗るか
- 背や側面に描かれた模様
- 頭部や尾の形、車を引くための紐の有無
人吉・球磨のきじ馬と地域の違い
熊本県人吉市は、きじ馬の製作技術を受け継ぐ地域の一つです。福岡市博物館の収蔵品解説では、人吉から球磨川をさかのぼった多良木でも作られていたことが紹介され、産地や作者によって形が異なる点に触れています。文化庁の文化財データベースも、人吉系、北山田系、清水観音系という三つの系統に分類し、形態の地域差を記しています。
そのため「これが唯一の正しいきじ馬」という見方より、産地ごとの違いを比べるのが楽しみ方の一つです。樹皮を残した木地を生かす作りや、彩色の鮮やかな作りなど、素材の選び方にも職人の工夫が表れます。
平家の落人伝説と雉の縁起は、伝承として楽しむ
人吉・球磨のきじ馬については、平家の落人が都を懐かしんで作り始めたという伝承が語られます。また、山中で道に迷った高僧を雉が導き、寺院建立につながったという縁起や、木地師との関わりを説く伝承もあります。熊本県や地域の観光資料に紹介されることがありますが、これらは地域に伝わる由来譚です。歴史上の制作開始を証明する記録と同じものとして扱わず、「そう語り継がれている」と紹介するのが適切です。
雉は日本の里山で身近な鳥であり、その姿を玩具に写したことが、地域の自然や暮らしを感じさせます。伝承を知ってから形を見ると、同じ「きじ馬」でも土地ごとに違う意匠が生まれた背景に思いを巡らせられます。
古い品・現代の品を楽しむポイント
| 見るところ | 楽しみ方 |
|---|---|
| 産地・作者 | 底面の印や購入時の説明書、箱書きを確認する |
| 木の削り跡 | 手仕事の跡や木目、仕上げの違いを見る |
| 彩色・模様 | 赤・緑などの色や、地域ごとの絵付けを比べる |
| 状態 | 割れ、欠け、塗装の剥がれ、車輪の動きを確かめる |
古い郷土玩具は、後から部品を直したり塗り直したりしている場合もあります。由来や年代が確かめられないときは、見た目だけで断定せず、販売者の説明や専門機関の資料を照らし合わせましょう。
きじ馬をもっと知りたい方へ
福岡市博物館の解説では、産地・作者ごとの造形を見比べる面白さが紹介されています。人吉市のクラフトパークでは、きじ馬や花手箱の展示・絵付け体験が案内されています。地域に足を運んで実物を見たり、作り手の話を聞いたりすると、木の質感や彩色の違いをより深く味わえます。
別の地域玩具では、福島の三春駒や、こけしの産地と系統も紹介しています。郷土玩具を実際に探すときは、福もの市場のほか、出品状況が変わる一点物についてはメルカリ掘り出し物市場もご覧ください。
参考資料
- 文化庁「国指定文化財等データベース:九州地方のきじ馬・きじ車製作技術」
- 福岡市博物館「きじ馬と木うそ-九州・木の郷土玩具-」
- 人吉市「九州地方のきじ馬・きじ車製作技術が国選択無形民俗文化財に選択されました」
- 道の駅人吉/人吉クラフトパーク石野公園「民工芸館」

.jpg)
