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子どもの着物に縫う、小さなお守り「背守り」とは?

ふくみる編集部

赤い糸巻きと縫い針の参考写真。背守りの完成品ではない
この記事の目次

子どもの着物の背中に、ぽつんと縫われた小さな印。飾りのように見えて、そこには「元気に育ってね」という願いが込められていました。それが「背守り(せまもり)」です。

神社やお寺で授かるお守りとは少し違う、暮らしの中で針と糸を使って添えられてきたお守り。着物の仕立てとの関係や、今の暮らしで楽しむヒントをたどってみましょう。

アイキャッチは針と糸の参考写真です。背守りの実物資料ではありません。写真:www.photos-public-domain.com/Wikimedia Commons(CC0)。掲載サイズを調整。

背守りとは? 子どもの背中に添えた願い

背守りは、幼い子どもの着物の背中側に付けられた、厄災よけの印です。石川県立歴史博物館の解説では、背面の衿の下に施した縫い取りや、押絵を使った例が紹介されています。糸だけの控えめなものから布を使うものまで、姿は一つではありません。

「背守」「背守り」と表記され、読みは「せまもり」。背中に付くかわいい刺繍を眺めるとき、その見た目とともに、子どもを見守った人たちの気持ちにも目を向けたくなります。

どうして背中? 「一つ身(ひとつみ)」の着物との関係

鍵になるのは、幼児が着る「一つ身(ひとつみ)」という着物の仕立てです。国際基督教大学博物館湯浅八郎記念館の資料解説によると、並幅の布一枚で仕立てる一つ身には、後ろ身頃の背縫いがありません。

かつては、その縫い目のない背中から魔が入ると考えられ、糸や布を縫い付けて守りの印にしたと説明されています。これは当時の信仰や民俗として伝わる考え方です。今の子ども服に背守りがないから心配、という意味ではありません。

衣服に込める願いは、成長を祝う行事ともつながります。節目の文化を知るなら、七五三の年齢や千歳飴に込められた意味も一緒にどうぞ。

縫い取りだけではない、背守りのいろいろ

石川県立歴史博物館では、明治時代の飾り縫い見本や、1907〜1908年に作られた背守り見本帳、大正から昭和初期の押絵背守りが紹介されています。昔のものにも、さまざまな表し方があったことがわかります。

金沢くらしの博物館の収蔵品紹介にも、背守りの付いた着物が掲載されています。「どこにあるのかな」と背中に注目してみると、着物を見る楽しみが一つ増えそうです。

なお、家紋の周りを友禅の文様で飾る「加賀紋」は、背守りと一緒に展示されることがあっても、同じものを指す言葉ではありません。背中の飾りを何でも背守りと呼ばず、資料の説明を確かめることが大切です。

実物は、博物館の資料写真で見てみよう

背守りの位置や布との組み合わせは、実物の資料写真を見るとイメージしやすくなります。江戸東京博物館所蔵「背守り付宮参り着物」は、1914(大正3)年の資料として公開されています。

また、文化遺産オンライン「子供着物 兜文」では、着物の仕立てと背守りについての解説を読めます。全体を眺めてから背中へ視線を移すと、小さな印の存在がぐっと身近になります。

今の暮らしなら、小さな布や紙で楽しんでも

いきなり子どもの晴れ着に針を入れなくても、手元の布で縫い取りを試したり、図案を眺めたりするところから楽しめます。現代の手芸として紹介された図案には、昔からの文様を生かしたものと、作家の新しいデザインがあります。歴史資料そのものと区別しながら選びましょう。

台紙に巻いて整理した色とりどりの刺繍糸。背守りの図案や色の決まりを示すものではない
手芸用の糸の参考写真。背守りの完成品ではありません。写真:RedenimCrafts/Wikimedia Commons(CC BY 4.0)。掲載サイズを調整。

たとえば堀川波さんの『かわいい背守り刺繍』(誠文堂新光社)には、伝統的な柄とともに、Tシャツやバッグにも使えるオリジナル図案が収録されています。エクスプランテの『【背守り】練習帖』は、紙に穴を開けて糸を通す練習から始められる内容です。

作ってみたいときは、図案だけでなく、必要な用具や縫い方の説明がある本・キットを選ぶと取り組みやすくなります。糸の色や針数を一律の正解にせず、参考にする資料や図案の説明に沿って楽しみましょう。

レンタルの着物には、あらかじめ貸主に確認を。針を使う作業は大人が管理し、着せる前には針の取り忘れや糸の緩みがないか確かめます。行事当日の準備は、七五三の当日の流れと持ち物チェックも参考になります。

小さな一針から、見守る気持ちを知る

背守りの魅力は、飾りの大きさよりも、その奥にある願いに気づけることかもしれません。着物を着る日にも、博物館で古い衣服に出会った日にも、背中の小さな印を探してみませんか。

手を動かして願いを形にする文化が気になったら、折り鶴や千羽鶴に込められた願いもぜひ。身近な素材から生まれる、日本の祈りのかたちに出会えます。

あわせて読みたい

七五三の年齢と千歳飴の意味
七五三当日の流れと持ち物
折り鶴と千羽鶴の歴史

参考資料

石川県立歴史博物館「かわいい背守りと加賀紋」
文化遺産オンライン/国際基督教大学博物館湯浅八郎記念館「子供着物 兜文」
金沢くらしの博物館 収蔵品紹介「衣」
Tokyo Museum Collection/江戸東京博物館「背守り付宮参り着物」
誠文堂新光社『かわいい背守り刺繍』
エクスプランテ『【背守り】練習帖』

資料確認日:2026年10月20日。風習や衣服の用い方は地域・時代・家庭によって異なります。

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