
この記事の目次
- 『古事記』では、海辺にいた大国主神の前へ、小さな神・少名毘古那神が波の彼方から現れます。
- 神産巣日神の言葉を受け、二柱は力を合わせて国を作り固めたと語られます。
- 少名毘古那神が常世国へ去った後、大物主神が現れる展開へ続きます。
「大国主の国づくり」は、出雲神話の中心となる物語のひとつです。『古事記』では、因幡の白兎や須佐之男命の試練を経た大国主神が、少名毘古那神とともに地上の国を作り固めたと語られます。ここでは主に『古事記』の筋をたどり、ほかの古典との違いにも触れます。神話・伝承として読み、歴史上の出来事と断定しないようにしましょう。

波の彼方から現れた少名毘古那神
『古事記』では、大国主神が出雲の御大の岬にいたとき、波の彼方から小舟に乗った小さな神が現れたと語られます。その神は、ガガイモの実で作った小舟に乗り、鳥の羽をまとっていたとされます。名を尋ねても周りの神々には分かりませんでしたが、ヒキガエルの神・多邇具久(たにぐく)は久延毘古(くえびこ)なら知っていると告げます。
久延毘古は、田畑に立つ案山子の神として語られ、歩くことはできなくても物知りだとされます。久延毘古の言葉から、訪れた神は神産巣日神の子・少名毘古那神だと分かります。神産巣日神は大国主神に、少名毘古那神と兄弟のように協力して国を作り固めるよう告げたと『古事記』は伝えます。
大国主神の国づくりを、神話と信仰史から深く読む
楽天市場・PR

『大国主の神話―出雲神話と弥生時代の祭り』
大国主神の物語を比較神話学と弥生期の祭りから掘り下げる一冊。少彦名神との国づくりを読み終え、出雲神話の背景をさらに考えたい方へ。
商品・仕様を見る楽天市場・PR

『大国主神と近代神道の形成』
近世から近代にかけて、大国主神が神道の中でどう位置づけられたかを扱う研究書。神話と後世の信仰を分けて知りたい方へ。
商品・仕様を見る広告・PR|価格・在庫・仕様は販売ページでご確認ください。掲載品は市販書籍です。
二柱が進めた「国づくり」
国づくりという言葉から、地図に線を引くような領土形成を想像するかもしれません。しかし古典に描かれるのは、神々が国土を整え、暮らしの秩序を形づくる物語です。『古事記』の本文は具体的な作業の手順を詳しく並べず、「二柱が並んでこの国を作り固めた」と簡潔に記します。
國學院大學の解説によると、記紀や『出雲国風土記』『播磨国風土記』などには、大国主神と少名毘古那神が国づくりをしたという伝承が広く見られます。医薬や湯治、まじないなどの事跡が結びつけられる資料もありますが、どの古典にも同じ内容が書かれているわけではありません。神話の細部は、資料ごとに分けて読むのが大切です。
| 場面 | 『古事記』で語られること | 読みどころ |
|---|---|---|
| 出会い | 少名毘古那神が海辺に小舟で現れる | 小さな神の正体を知恵で見抜く |
| 協力 | 神産巣日神の言葉を受け、二柱で国を作り固める | 異なる神々の協働として描かれる |
| 別れ | 少名毘古那神が常世国へ渡る | 物語は大物主神の出現へ続く |
少名毘古那神の旅立ちと大物主神の出現
『古事記』では、国づくりの後、少名毘古那神は常世国へ渡っていきます。ひとり残された大国主神が嘆いていると、海を照らして近づく神が現れました。その神は、大和の東の山に祀れば国づくりをともに成し遂げようと告げたとされます。この神が大物主神で、三輪山に鎮まる神としての伝承へつながります。
国づくりから国譲りへ続く大国主神の歩みは、大国主命の記事、国譲りの記事で紹介しています。大物主神との関係は大物主大神の記事、相棒となる神の姿は少彦名命の記事もあわせてご覧ください。物語の前段にあたる因幡の白兎から読むのもおすすめです。
大国主神と少名毘古那神の国づくりは、古典に伝わる神話です。『古事記』は二柱が国を作り固めたと語り、後の資料には医薬や湯治など別の事跡も見られます。異なる伝承をひとつの史実として混ぜず、出典ごとにたどると物語の広がりが見えてきます。


