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「七段飾りの一番下の人形、三人とも顔が違う。傘を持たせる? それとも箒?」――箱から出した仕丁(しちょう)の道具を前に、こんな疑問が生まれます。実は、関東風と京風では持ち物そのものが違います。写真を見比べずに買い足すと、雛人形に合わない道具を選びかねません。
この記事では、三人の表情を楽しむ背景から、五段目の並べ方、なくした小道具の探し方まで、日本人形協会と日本玩具博物館の資料を手がかりに整理します。

仕丁(しちょう)は何者?七段飾りの五段目にいる三人
七段飾りを上から見ると、内裏雛、三人官女、五人囃子、随身(左大臣・右大臣)、そして五段目に仕丁の三人が並びます。「三人上戸(さんにんじょうご)」とも呼ばれ、眉をしかめる怒り顔、涙ぐんだ泣き顔、口元がほころぶ笑い顔が見どころです。
「仕丁」という語は、古くは賦役などに従事した人々に関係します。ただし雛人形は、制度史を厳密に再現した模型ではありません。作品の時代・地方によって宮中の雑役、外出の世話、掃除、宴の様子など異なる場面が表現されます。日本玩具博物館は明治30年代の京都製の御殿飾りに、酒盛りや掃除をする仕丁がいたことを紹介しています。
七段飾りは十五人揃いがよく知られる一方、親王飾りや三段飾りに仕丁がいないのは欠品とは限りません。もともとのセット構成を確認しましょう。
泣き上戸・笑い上戸・怒り上戸の意味は?並び順は絶対?
三人はそれぞれ別の名前の神様ではなく、喜怒哀楽を人形の表情で見せる存在として語られます。泣き顔の人形に涙の描写があるか、怒り顔の眉がどう描かれるか、笑い顔に歯が見えるか――こうした違いは鑑賞の楽しみでもあります。
大事なのは「顔つきだけで持ち物や左右を決めない」こと。日本人形協会が示す代表的な配置はありますが、吉徳はどの人形に何を持たせるか必ずしも決まっていないと説明しています。顔の順番だけが違っても、直ちに誤りとはいえません。古い雛なら、購入時の写真や台座の印、手の穴の形が最も頼れる手がかりです。
仕丁の道具は関東風と京風で違う
最大の違いは役割の描き方です。関東風は外出に付き添う道具、京風は庭掃除の道具。名称の似た部品を無理に組み合わせないよう、まず手元の三点を見て判別します。
| 形式 | 持ち物3点 | どんな場面? | 探すときの注意 |
|---|---|---|---|
| 関東風(代表例) | 台傘(だいがさ)/沓台(くつだい)/立傘(たてがさ) | お出かけの世話。傘や履物を持つ | 台傘と立傘は形や固定方法が異なる |
| 京風(代表例) | 熊手(くまで)/ちりとり/箒(ほうき) | 庭掃除や雑役の様子 | 通常の掃除用品の模型や庭飾りと間違えない |
| 御殿飾りなどの変形 | 杯・酒器・鍋などの宴会道具 | 酒宴や団らんの場面 | 地域の古いセットを現代の標準配置に無理に合わせない |
写真の仕丁が鍋を囲んでいたら「道具が間違っている」のではなく、時代と制作地による別の表現かもしれません。日本玩具博物館が紹介する明治期の京都製の例は、そんな違いを考える入口になります。

七段飾りのどこに置く?「向かって左」からの順番
見ている人からの左右で説明すると、一般的な並べ方は次のとおりです。日本人形協会の2024年2月5日付解説に基づきます。
| 見る人の位置 | 関東風の代表例 | 京風の代表例 |
|---|---|---|
| 向かって左 | 台傘を持つ怒り顔 | 熊手を持つ怒り顔 |
| 中央 | 沓台を持つ泣き顔 | ちりとりを持つ泣き顔 |
| 向かって右 | 立傘を持つ笑い顔 | 箒を持つ笑い顔 |
五段目には仕丁の左右に桜橘を置く形式もあり、向かって左に橘・右に桜が一般的です。ただし一対の植物の寸法や形式もセットによって異なります。詳しくは桜橘の左右と買い替え方を参照してください。
表を絶対的な規則にしないことも大切です。製品によって顔と道具の対応が違い、手の作りや付属の説明書が優先されます。立たせる角度まで変えて無理に握らせると人形を傷めます。

仕丁の道具が1つだけないとき、買い直す前に調べること
「ちりとりだけ紛失」「傘の棒が折れた」というときは、全部を買い直すより手持ちの人形と道具の寸法から調べるほうが失敗を減らせます。とくに古いセットでは、同じ「七段飾り用」という出品名でも大きさが揃いません。
- 残っている道具を一列に並べる。先端から柄までの全長、太さ、飾り台の幅を測る。折れた棒の一部も保管。
- 関東風か京風か確かめる。傘・沓台か、箒・ちりとり・熊手か。メーカー名、箱の品番、組み立て写真を探す。
- 出品のセット内容を読む。三人本体だけか、小道具、烏帽子、台座まで付くのかを確認。「写真に写るものすべて」とは限らない。
- 破損状況を見比べる。髪の毛・胡粉・衣装の汚れだけでなく、手首と小道具の固定部分、首の緩みも確認。無理に差し込まない。
- 品番がわかれば購入元に相談。部品交換や修復が可能なこともあります。古い人形ほど同じシリーズの単品出品は稀なので、慌てて即決しない。
実際の中古出品には「人形の頭が外れそう」「小道具の差し込みが合わない」といった状態説明が見られます。出品者の申告をそのまま確認項目に置き換えると、眺めるだけでは分からない失敗を避けやすくなります。
楽天・メルカリで仕丁の三人と道具を探す
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購入を急ぐよりも、人形の大きさと道具の系統が合っているかが重要です。仕丁本体のないコンパクト飾りなら、三人セットを加える前に設置場所と段の奥行きも確認しましょう。
よくある質問
仕丁は雛人形の何段目?
一般的な七段飾りでは上から五段目です。三段飾りや親王飾りには含まれないことがあります。
泣き・笑い・怒りの順番は決まっていますか?
日本人形協会による代表例は、向かって左が怒り、中央が泣き、右が笑いです。ただし製品・地方・時代によって例外があり、説明書が最優先です。
関東と関西の仕丁は何が違いますか?
関東風は台傘・沓台・立傘、京風は熊手・ちりとり・箒が代表例です。御殿飾りでは酒器などの宴会道具が登場することもあります。
中央に置くのはちりとりですか?
京風の代表例では中央がちりとりです。関東風では中央に沓台を置く例が一般的です。
仕丁を「衛士」と呼ぶこともありますか?
雛人形の解説で仕丁・衛士という呼称が使われる例はあります。歴史上の役職と雛飾りの表現を同一視せず、製品の名称も照合してください。
道具だけ別売りで買えますか?
中古品や修理用部品として出回ることがあります。人形の大きさ、差し込み部、左右の組合せ、衣装の雰囲気を確認しましょう。
道具がないまま飾ると縁起が悪い?
道具の欠品が不幸を招くという実証的な根拠はありません。飾りの文化を大切にしながら、修理や補充の可否を判断すれば十分です。
昔の仕丁が宴会しているのはおかしい?
おかしくありません。日本玩具博物館は明治期の京都製御殿飾りに、宴の様子を表した三人を紹介しています。
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確認した資料・画像の扱い
- 一般社団法人日本人形協会「雛人形の仕丁」(2024年2月5日):役割、持ち物、関東・京風の代表的な並び方。
- 日本玩具博物館「仕丁」(2012年2月):明治期の京都製の御殿飾り、表情と宴の解説。
- 吉徳「雛人形の飾り方と並べ方」:五段目の配置と製品ごとの違い。
- 桂甫作安藤人形店「七段飾り」:京都の人形制作側から見た仕丁の位置づけ。
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