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国譲りの使者は誰?天之菩卑能命・天若日子・天鳥船神を比較

ふくみる編集部

邇邇芸命と従者たちが地上へ降臨する場面を描いた1911年の図版
この記事の目次

国譲りでは、建御雷神(たけみかづちのかみ)が地上へ向かう前にも使者が送られます。天之菩卑能命(あめのほひのみこと)、天若日子(あめわかひこ)、天鳥船神(あめのとりふねのかみ)の働きを『古事記』に沿って整理し、同じ使者でも役割が異なることを見ていきます。

名前・資料読むときの目印
天之菩卑能命最初の使者。『古事記』では三年報告しない
天若日子次の使者。下照比売と結ばれ、八年報告しない
天鳥船神建御雷神に同行し、事代主神(ことしろぬしのかみ)を迎える
邇邇芸命と従者たちが地上へ降臨する場面を描いた1911年の図版
邇邇芸命一行の降臨を描いた1911年の挿絵。この記事の各神そのものの肖像ではありません。萩野由之『少年日本歴史読本 第二編』/Wikimedia Commons・Public Domain。

天之菩卑能命(あめのほひのみこと)――最初に遣わされた使者

天之菩卑能命(あめのほひのみこと)は、天照大御神(あまてらすおおみかみ)と須佐之男命(すさのおのみこと)の誓約で生まれる五柱の男神の一柱です。『古事記』では、地上を平定するため最初に派遣されますが、大国主神(おおくにぬしのかみ)に従い、三年たっても報告しなかったと語られます。

一方、出雲国造神賀詞では、天穂比命は地上を視察し、平定を進める功績のある神として語られます。國學院大學の解説が指摘するように、資料によって位置づけや評価が違う神です。一つの伝承の評価だけで、ほかのすべての信仰を説明することはできません。

天若日子(あめわかひこ)――下照比売と結ばれ、報告しない

次に派遣される天若日子(あめわかひこ)は、地上で大国主神の娘・下照比売と結ばれ、八年たっても報告しません。問いただすために遣わされた雉の鳴女(なきめ)を矢で射たところ、矢は高天原(たかまのはら)まで届きます。

高木神はその矢を返し、矢に胸を貫かれた天若日子は死にます。物語のあとには葬儀と、姿の似た阿遅志貴高日子根神(あじしきたかひこねのかみ)を取り違える場面も続きます。天若日子が最後の国譲りの交渉を成立させた神というわけではありません。

天鳥船神(あめのとりふねのかみ)――建御雷神(たけみかづちのかみ)に同行し、事代主神(ことしろぬしのかみ)を呼ぶ

天鳥船神(あめのとりふねのかみ)は、鳥之石楠船神の別名です。『古事記』では建御雷神とともに地上へ派遣され、不在だった事代主神を呼び戻します。最初の二人の使者と、同じ結末をたどる神ではありません。

船としての性格と神としての性格が重なるところに特徴があります。名前に鳥があるからといって、必ず鳥の姿の神だと考えるのではなく、移動の速さや船の神格化に関する解釈があることを知っておくと読みやすくなります。

三つの名前を、一つの失敗談にまとめない

天之菩卑能命は三年、天若日子は八年と、報告しない期間も異なります。天鳥船神は事代主神を迎える役割です。使者という共通点だけで、三者が同じ行動をしたと要約しないようにしましょう。

また、『日本書紀』の国譲りでは経津主神(ふつぬしのかみ)などの位置づけが異なります。どちらの書物の使者かを示すことが大切です。経津主神の記事も比較の入口になります。

交渉の結末へつながる

事代主神の返答と建御名方神(たけみなかたのかみ)の力競べを経て、国譲りの結末が語られます。事代主神、建御名方神、全体をたどる国譲り神話へ進むと、それぞれの使者の位置が見えてきます。

三年と八年、戻らない二人の使者

最初に派遣される天之菩卑能命は、大国主神に従い、三年たっても復命しません。次の天若日子は弓矢を授けられますが、下照比売と結ばれ、その国を自分のものにしようとして、八年たっても報告をしません。帰らないという共通点があっても、それぞれの理由とその後の展開が違います。

使者派遣後の展開
天之菩卑能命大国主神に従い、復命しない
天若日子婚姻し、返り矢で命を落とす
天鳥船神建御雷神と交渉に出向き、事代主神を呼ぶ

雉を射た矢が、天上から戻ってくる

天若日子を問いただすため、雉の鳴女が地上へ送られます。天若日子がその雉を射ると、矢は天上へ達し、高木神に返され、本人を貫きます。派遣のときに授けられた弓矢が、使命を果たさない使者自身へ戻るという、道具の行方にも注目できる構成です。

この死は、友人が弔いに来る場面と、阿遅志貴高日子根神と高比売命(たかひめのみこと)の物語へ続きます。国譲りの交渉だけを追うと脇道に見えても、葬送や歌を生む大切な接続点になっています。

天鳥船神(あめのとりふねのかみ)は、最後の交渉の中で動く

建御雷神と天鳥船神が地上へ降りた段階では、さらに別の使者が失敗を繰り返す話ではなく、大国主神へ意思を問い、子の返答を確かめる交渉へ進みます。天鳥船神は、不在の事代主神を呼んでくる働きを担います。誰がどこへ動くかを見ると、使者という大きな呼び方の中にも役割の違いがあります。

その先の問答と力競べは建御雷神、返答をする側は事代主神で読めます。派遣、報告、問い、返答という順にたどると、国譲りが一度の戦いだけで決まる物語ではないことが分かります。

解説の参考:天之菩卑能命 / 天鳥船神 / 天若日子

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天之菩卑能命(あめのほひのみこと)の子・建比良鳥命(たけひらとりのみこと)

建比良鳥命(たけひらとりのみこと)

天照大御神と須佐之男命の誓約で生まれた天之菩卑能命の子として、その後に系譜が記されます。出雲国造をはじめ、複数の国造(くにのみやつこ)・氏族の祖として名が挙がります。

父の天之菩卑能命と同一神ではありません。また、名に鳥が含まれるからといって、国譲りに派遣される天鳥船神や、神武を導く八咫烏(やたがらす)と同じ存在とも扱いません。本文が示す親子と祖の関係を優先します。

この補足の出典

出典・参考資料

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