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櫛名田比売とは?八岐大蛇と須佐之男命をわかりやすく解説

ふくみる編集部

月岡芳年の錦絵に描かれた須佐之男命と八岐大蛇の神話
この記事の目次

櫛名田比売(くしなだひめ)は、八岐大蛇(やまたのおろち)と須佐之男命(すさのおのみこと)に関わる存在です。古典に記された物語と、後世の信仰を分けて見ていきましょう。

櫛名田比売(くしなだひめ)の登場する物語

『古事記』で足名椎(あしなづち)・手名椎(てなづち)の娘として登場し、八岐大蛇に狙われる。須佐之男命は櫛名田比売を櫛に変えて身につけ、大蛇を退治したのち妻に迎える。『日本書紀』では奇稲田姫などの表記がある。

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八岐大蛇退治の前後

須佐之男命は老夫婦から、八つの頭と尾を持つ大蛇が毎年娘を奪い、最後に櫛名田比売が残されたと聞きます。神話では酒を用いて大蛇を眠らせて退治し、その尾から得た剣が後の草薙剣(くさなぎのつるぎ)の物語につながります。

見るところ読み解く手がかり
読み方くしなだひめ
父母『古事記』では足名椎・手名椎
夫神須佐之男命
『日本書紀』の表記本書の奇稲田姫など。異伝では表記が異なる
月岡芳年の錦絵に描かれた須佐之男命と八岐大蛇の神話
月岡芳年「日本略史」の錦絵。八岐大蛇退治を描く後世の絵画です。Wikimedia Commons(Public Domain)。

八岐大蛇退治のあと、須賀の宮へ

退治ののち、須佐之男命は住まいを求めて須賀へ向かい、宮を営みます。大蛇との戦いが終わると、新しい住まいと家族の物語が始まります。櫛名田比売を「大蛇に狙われた娘」だけで覚えるより、須佐之男命の地上での暮らしの始まりまで読むと、この女神の位置がわかります。

出雲大社が紹介する神楽(かぐら)の演目「八戸」でも、奇稲田姫との結婚、須賀の宮、八雲立つの歌がつながっています。これは神楽として伝えられる物語の案内であり、『古事記』本文と同じ種類の史料として扱うものではありません。

「稲田」の神名から何がわかる?

神名には稲田との関係がうかがわれ、農耕儀礼と神話の関係を論じる説があります。一方、國學院大學の解説は、大蛇退治を含まない『日本書紀』の異伝をどう評価するかにも議論があることを紹介しています。語源説や神話の成り立ちの仮説を、古典に明記された出来事と区別しておくことが大切です。

「櫛名田比売を櫛に変えた」という『古事記』の描写と、神名の最初の字の由来も、自動的に同じ説明にはなりません。物語に登場する道具と、名前の研究上の解釈を分けると読み違いが減ります。

須勢理毘売(すせりびめ)と混同しないために

櫛名田比売は須佐之男命の妻、須勢理毘売は『古事記』でその娘として登場する別の女神です。似たひびきの女神が続く出雲神話では、誰の妻・娘として登場するかを目印にすると読みやすくなります。詳しい退治の筋は八岐大蛇、須佐之男命の前後の行動は須佐之男命の記事へどうぞ。

足名椎(あしなづち)とは?櫛名田比売(くしなだひめ)の父

足名椎(あしなづち)は、『古事記』で大山津見神の子と名乗り、手名椎とともに娘の櫛名田比売の危機を須佐之男命へ語る老父です。八人の娘が毎年八岐大蛇にのまれ、最後に残った娘を救うことが、退治の発端になります。物語の後では須賀の宮の首に任じられ、「稲田宮主須賀之八耳神」という名を与えられます。

手名椎(てなづち)とは?家族を語る母

手名椎(てなづち)は櫛名田比売の母です。足名椎と対で登場しますが、一柱の別名ではありません。足・手を持つ神名を稲作などと結びつける解釈はあるものの、その解釈と本文に描かれた親子関係を分けて読みます。『日本書紀』では脚摩乳・手摩乳などの表記があり、異伝ごとの筋や名を『古事記』へそのまま移さないことが大切です。

詳しくは國學院大學の足名椎・手名椎の解説を参照してください。

八人の娘の、最後に残された一人だった

須佐之男命が出雲の川上で出会うのは、娘を間に置いて泣く足名椎・手名椎の夫婦です。八人いた娘が毎年大蛇に取られ、今度は櫛名田比売の番だと語ります。大蛇退治は、突然出会った怪物との勝負ではなく、家族が繰り返し失ってきた命を救うために始まる話です。

須佐之男命は自らの素性を明かし、娘との結婚を求めて、退治を引き受けます。父の足名椎は大山津見神の子を名乗るため、この家族は山の神の系譜にもつながります。大蛇の恐ろしさだけでなく、誰が誰の子かを確かめるやり取りにも、婚姻の背景があります。

櫛に変えることと、酒を用意することは別の準備

須佐之男命は櫛名田比売を湯津爪櫛に変え、自分の髪に挿します。それから足名椎・手名椎に酒を醸させ、垣に八つの入口を設け、そこへ酒を置くよう命じます。姫神を守る処置と、大蛇を酔わせる仕掛けの二つが整ってから、退治が始まります。

大蛇が酒を飲んで眠ったところを斬るため、物語では準備と策が大切です。櫛名田比売を、その間ただ画面の外で待つ人物として描くより、櫛となって須佐之男命の身近に置かれる場面を知ると、神名と物語の関係が分かります。

「櫛」と「奇稲田」という表記から考える

『日本書紀』には奇稲田姫や稲田媛などの表記が見られます。クシを霊妙なという意味とする説や、稲田の祭りを担う巫女、稲田の守護神と考える説が、國學院大學の解説で紹介されています。『古事記』の櫛という字には、櫛へ変えられる場面も重なります。

洪水や農耕との関わりを読む説もありますが、大蛇の形を特定の川の水害だけに還元して、解釈を一つに決めることはできません。どの字で記され、どんな行為が描かれるかを組み合わせると、名が持つ連想の広がりを楽しめます。

退治の後は、須賀の宮と家族の物語へ

須佐之男命は、大蛇を退治した後、出雲に宮を造り、櫛名田比売と結ばれます。二神の子は八島士奴美神(やしまじぬみのかみ)とされ、その後の系譜は大国主神(おおくにぬしのかみ)の物語へ続きます。助けられた娘という一場面だけでなく、次の世代へつなぐ母神としても位置づけられます。

神須佐之男命との関係
櫛名田比売大蛇退治の後に結ばれる妻
須勢理毘売根の国で大穴牟遅神(おおなむちのかみ)を助ける娘

似た響きの姫神が同じ話に登場するわけではありません。須勢理毘売と比較すると、妻として出雲の宮へ入る神と、娘として根の国から旅立つ神の違いが整理できます。

解説の参考:櫛名田比売 / 足名椎 / 手名椎 / 演目:八戸(やと)

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