
この記事の目次
まず3つだけ
- 宝船は、宝物や七福神を乗せて福を運ぶ縁起物として親しまれてきました。
- 江戸時代には、よい初夢を願って宝船の絵を枕の下に敷く習慣が広がりました。
- 絵の構図や乗せる宝物は時代や作品によって異なります。
宝船とは?
宝船(たからぶね)は、宝物を積んだ船を描いた縁起物です。七福神が乗る図がよく知られますが、米俵や打ち出の小槌、金銀、珊瑚などを載せる絵もあります。決まった一つの図柄があるというより、福や豊かさを船に託した、さまざまな意匠が受け継がれています。
東京国立博物館が紹介する江戸時代の浮世絵にも、七福神の宝船が描かれています。船の帆や宝物、神々の姿を眺めると、当時の人々が新年にどんな福を願ったのかが見えてきます。

初夢に宝船の絵を枕の下へ
宝船は、初夢と深く結びついた縁起物です。江戸時代には、正月二日の夜などに宝船の絵を枕の下に敷いて寝ると、よい夢が見られるとされました。江戸の町には、正月に「お宝、お宝」と呼びながら絵を売り歩く宝船売りもいたと、江戸東京博物館が紹介しています。
絵には、次のような回文歌が書かれることもありました。
長き夜の 遠の眠りの 皆目覚め
波乗り船の 音のよきかな
上から読んでも下から読んでも同じになる回文です。「長い夜の眠りから皆が目を覚まし、波に乗る船の音がよい」という言葉に、新年の目覚めや福を迎える願いを重ねたのでしょう。風習や歌の形には地域・時代による違いがあります。
七福神と宝物が船に乗る理由
七福神は、恵比寿・大黒天・毘沙門天・弁財天・福禄寿・寿老人・布袋の七柱です。神仏の由来も姿も異なる七福神が一艘の船に乗る図は、福をまとめて迎える象徴として親しまれてきました。七福神の名前や見分け方は七福神の記事をご覧ください。
| 船に描かれるもの | 込められる願いの例 |
|---|---|
| 七福神 | 福徳を招く |
| 米俵・稲穂 | 豊作や食の恵み |
| 打ち出の小槌・宝珠 | 願いがかなう、宝を得る |
| 鶴・亀・松竹梅 | 長寿やめでたさ |
これらは作品に描かれることのあるモチーフで、すべての宝船に同じ宝物が載るわけではありません。恵比寿さまの鯛や大黒天の小槌など、七福神それぞれの持ち物と一緒に見ると、絵の中の物語も読み取りやすくなります。恵比寿さまと鯛の記事、大黒天と小槌の記事もあわせてどうぞ。
宝船を楽しむときのポイント
- 七福神の人数や並び、船の形に決まりがあると思い込まず、作品ごとの違いを楽しむ。
- 枕の下に敷く風習は、初夢に福を願う昔の習慣として紹介する。
- 現代の置物や正月飾りは、由来を知ったうえで暮らしに合う形で取り入れる。
宝船は、見る人に福を約束するものというより、「よい年になりますように」という願いを形にした縁起物です。浮世絵の七福神から、現在の正月飾りまで、船に何が積まれているかを比べてみてください。
出典・画像について
- 江戸東京博物館「笑う門には福来る展」
- 江戸東京博物館「初夢とはいつみる夢の事か。」
- 文化遺産オンライン「宝船の七福神」
- 画像:歌川豊国(一世)「七福神と宝船」(1806年頃)、Harvard Art Museums所蔵。Wikimedia Commons経由、パブリックドメイン。作品・ライセンス情報。